そう驚き感動しているヒマなどないのだ!
自宅で自力で出産してしまったということはその後の処置を僕がしなければならない。
助産院で産む想定しかしていなかったため、このパターンのイメトレはしていない。
というか生まれた後何をするかはかぶっちゃけわかりましぇん!。
「この命守らなあかん!」父親になったからだろうか?何故か関西弁で自分自身を鼓舞し、(㊟群馬県出身です)脳内コンピューターをフル稼働させる。
どうしたらいいのか?
お産本のページをめくるのか?(500ページ以上ありました)ここはひとつググるのか?
脳内ハードディスクは不測の事態で煙をあげている。
どうしよう?
そうだ自宅で産んだ人に聞いてみよう!
数人の自宅出産ママに電話すると三人目でヒット!
「もしもし潤君。ひょっとしてうまれたん?」
「そうなんだよ、生まれたんだけど、ちょっと大変で」
「よかったやん。ここ数日気になっててん・おめでと~!」
「いやだからうまれちゃってね・・・」
こちらの状況を一言で伝えるのは難しい。
テンションがかみ合ってないぞー!
少し話してこちらの状況をわかってもらい、へその緒の切り方などについて教えてもらう。
「ふんふんお湯を沸かして、麻ヒモとはさみを用意して、それからそれから?」
「ていうか潤君、助産師さんに連絡したほうがええんちゃうの?」
「・・・それだ!」
男ってつかえないですね。
助産師さんに一報を入れた後は家族三人のとても穏やかで落ち着いた神聖な時間が流れた。
生まれたばかりの赤ちゃんはとても穏やかに眠っていた。
血液やらなんやらついたままだったけど、かまうものか!
三人で抱き合うと、とても良い匂いがして幸福な気持ちに包まれた。
明子と赤ちゃんが無事に誕生してくれたことを喜び、明子の苦労をねぎらい、陣痛中を振り返った。すべてがよくできた物語のように思えて、僕らは感動的なエンディングを迎えている。
一瞬のような永遠のような、時間や空間を超えた満ち足りた時間。
僕らはこれから家族だ。
その後2時間程胎盤もへその緒もつながったまま3人で過ごし、助産師さんが到着。
事なきを得た。
不思議なタイミングで自宅出産してしまった私たち家族。
「女の産む力、子供の生まれる力、本能を信じて任せておけば大丈夫!」という友人の言葉とおり、赤ちゃんは自然と生まれてきました。
赤ちゃんがその場所・タイミングを選んでくれて、産むのはここでしょ?とガイドしてもらったようにも感じます。
女性の本能と子供の命の輝きの前に僕はなにもできませんでした。
明子と赤ちゃんにこの貴重な体験をシェアしてもらったという感じです。
何もできないなりにも僕なりにお産にかかわり、命を受け止められたことは、僕ら家族の絆を深め意識を変えてくれました。
主役は女性のお産ですが、男性の理解と協力があればスムーズに進むこともあるだろうし、男性にとっても貴重でミラクルな体験になるかもしれません。
男性が自分事としてお産を受け止めることで夫婦の関係や理解も深まるのではないかと思います。
僕は今回の体験で「お産は女性の仕事」という思い込みから「お産は女性が主役」という想いに変わりました。
女性の産む形、男性のサポートの形はみんなそれぞれ、すべてがスペシャルな物語だと思います。僕が伝えたいのは男にもできることがたくさんあるってことです。」
最後に、こんな僕を父親に選んでくれたうえ、お産が家族の神聖なセレモニーであることを思い出させてくれた明子と息子に心から感謝します。
次も自宅で産もうね!
2015.10.11 星野 潤